気を失ったら会話にならないので、手を放すとどさりとその場に崩れ落ちた。陛下は赤黒い顔で涙目になり、咳き込んで話ができない様子だ。
 まあ、僕の言うことが理解できれば問題ない。

「余計な真似したら、この国ごと潰すよ?」

 僕からラティを奪うなら、こんな国くらい一瞬で消してやる。そう暗に伝えると、陛下は大きく首を上下に振った。
 やっとまともな話ができたのでいつもの僕に戻り、これからのことを説明した。僕がいれば戦争に負けることもない。ラティが婚約者でいることで、帝国よりも大きな利益をもたらすと教えてやった。

 最後の方には虚ろな目になっていたけど、宰相もしっかり聞いていたし大丈夫だろう。ラティの自由時間も終わるので、結界を解いて陛下の執務室を後にした。