「奴らの目的は”血”でした。話は三代前の皇帝に遡ります。その頃から皇族でありながら、平民や魔力の低い貴族から正妻を娶り、代を重ねるごとに皇族の魔力が低くなっています」

 確かにここ何代か、礼儀作法のなっていない皇后ばかりだったと聞く。
 以前、王妃が愚痴っていたのを耳にしたことがあった。高位貴族たちの妻も至らない者が多く、本当に貴族なのかと憤慨していた。きっと高位貴族でも同様のことが起きているのだろう。
 シアンに先を続けろと視線で促す。

「皇太子グラントリー殿下や皇女エルビーナ殿下も然りです。そのため臣下の反発を抑える抑止力が足りず、内部崩壊寸前という状況です。打開策として魔力の多い者と婚姻して保身を図るつもりです」
「つまり隔離されるほど魔力のある僕との子が欲しいということか」
「はい、グラントリー殿下も妃候補を物色するため、来訪しているようでございます。高位貴族のご令嬢もすでに何人か声をかけらてます」
「なるほど……王族は僕と弟のアルテミオしかいないからな」

 妻の祖国がクーデターなど起こそうものなら、援軍として駆り出されていたに違いない。妻としてきっちり役目を果たしてくれるなら、手を貸すのは惜しくない。だが、あの女が王太子妃になったところで、足を引っ張られるだけだ。
 それでも帝国との取引でメリットがあったから、前は受けたけれど。