「な、なにをしていますの……?」
「エルビーナ様、これがフィル様を癒すことになるのです。専属治癒士である私の大切なお役目なのです。お目汚しして申し訳ございませんが、少々お待ちいただけますか?」
「……へ、へえ。それならわたくしが代わりに——」
「特別な治癒魔法が使えるラティだから成り立っているのです。代われる者はいません」

 フィル様の言葉に遮られたエルビーナ様はやっと口を閉ざした。
 私は羞恥心に耐え、変な汗をかきながらフィル様の好きにされている。それでもじっと耐えに耐えていた。

「……わたくし気分が悪くなったので失礼いたしますわ」

 それから五分も経たないうちに、エルビーナ様がそう言って席を立った。

 私はどうやら勝利したらしい。
 この身を張った勝負に勝ったのだ。さすがイライザ様のアドバイスは的確だ。そして——

「やっと邪魔者がいなくなったね。これで心置きなくラティを堪能できるよ」
「そ、そうですね……ははは」

 フィル様の獲物を狩る猛獣のような視線に逆らえるはずもなく、その後一時間もそのままだった。