翌朝、決意を新たに朝食の席へ向かうと、フィル様はまだ来ておらずエルビーナ皇女が腕組みして仁王立ちしていた。一瞬怯んだ心を自分で励まして挨拶をする。

「おはようございます、エルビーナ皇女様」
「ちょっと! 貴女がフィルレス様の婚約者でしたのね!?」

 今まで気が付いていなかったのかと、半眼になる。私のことなど眼中にないのはわかっていたけれど、知ったうえで無視しているのかと思っていた。
 それと挨拶もまともに返せない皇女には、相応の態度でいいだろうか。

「……はい、そうです。それがなにか?」
「貴女、図々しいわよ! 今すぐ婚約解消してフィルレス様を解放しなさいっ!!」

 図々しいのはどっちだ!
 という言葉を呑み込んで、治癒室で身につけた華麗なスルースキルを披露した。

「あら、エルビーナ皇女様、吹き出物ができてますわね。よろしければ、私が治癒魔法で治しましょうか?」
「え、本当!? ……じゃなくて! 貴女、本日から朝食は自室で召し上がりなさい!」

 ほんの少しだけ考えて、私はその提案を受け入れることにした。

「承知しました。それではそのようにいたします。フィル様には私から伝言しておきます」