「……すみません。思わず感極まってしまって。ところで、五年も前のことなのにどうやって調べたのですか?」
「ああ、それはね、王太子命令で関係者を呼び出して、事実を聞き取りしただけだよ」
「さすがですね」

 私があれほど声を上げても、すべて無視されたのに。やはり権力には逆らえないのだ。

「念のため、隣にバハムートにもいてもらったから、みんなスラスラ話してくれたけどね。ついでにルノルマン公爵の判定試験も使ってラティの正当性を調べさせたんだ」
「……それは」

 ということは、あのお茶会はフィル様が仕組んだものだったのか。
 義妹と元婚約者が招待されたのも、お茶会に呼ばれていた貴婦人たちが私の患者だったのも、フィル様がなにかしら関与していたのだ。

 待って、ここまで関与して正当な判定ができるものなのだろうか?
 よく考えてみれば、フィル様がすべての判定試験に関与しているような気もする。というか関与している。最初の話ではあくまでも婚約者のために協力するというものではなかったか?

「本当に神竜効果がすごかったな。実際は僕の管轄の仕事ではなかったけれど、大切な婚約者のためだし、ね?」

 僕の管轄ではないって、それは——

「思いっきり職権濫用ですよね!?」
「ラティ、使えるものは使ってこそ価値があるんだよ」

 フィル様の笑顔が黒かったのは言うまでもない。
 ほんの少しだけ、一瞬だけ、なんで好きって言ってくれないのと考えた自分を消したくなった。

 やっぱり腹黒王太子の婚約者は、私には無理だ。