「ちょ……なっ、なんでフィルレス殿下が!?」
「緊急事態だったの。ここは私が見るから、ユーリは他の患者様をお願いできる?」
私たち一般治癒士の間では、王族なんて面倒ごとしか運んでこない存在だ。そんな治療に部下を巻き込むことはできない。ユーリは高速で首を縦に振っている。
「特別室には極力誰も近づけないようにね。エリアス室長は城下町の火災で出ているけれど、もし戻ってきたら事情を伝えてくれる?」
「わ、わかりました……でも、ラティシアさんはどうなるのですか?」
「んー、なんとかなるわよ。これでも伯爵家の嫡子だし。あ、ほら患者様がいらっしゃったわ。お願いね」
本当は名前だけの嫡子だけど、心配するユーリを安心させたくてそう言った。
ユーリはこの治癒室に配属されてから、私を姉のように慕ってくれている。申し訳なさそうに、やって来た患者様の対応に向かった。そっと扉を閉めて短いため息をつく。
「さて、今後の身の振り方でも考えようかしら」



