「もう終わりですか。ではラティシア様にご挨拶してもよろしいですか?」
「ダメだ。グレイは近づくことも許さない」
「えええ……! 頑張って強欲女の相手してきたのに……報奨はないのですか!?」
「一週間の休暇で我慢しろ」
「そんな……! 女神が目の前にいるのに、声もかけられないなんて……!」

 この様子を見ていたビオレッタが口をパクパクさせている。

「嘘……なんで? グレイが……? まさか、最初から……?」

 さて、そろそろいだろうか。いい加減、馬鹿たちと話すのも疲れてきた。

「カールセン伯爵夫妻は、爵位剥奪。平民となり、マクシスは去勢のうえ第九街区へ追放、ビオレッタは第十三街区の娼館へ追放する」

 第九街区は詐欺師が横行する区域で、まともな商人や民は立ち入ることがない。王都に住む民すら避けて通る区域だ。

 第十三街区は娼館が立ち並ぶ区域だが、その中でもガラの悪い男たちが訪れる店に話は通してある。股の緩いビオレッタなら才能を活かせる職場だ。

「僕には慈悲の心もあるから、君たちがなるべく辛い思いをしないように手配したよ。そこでラティが見てきた地獄を存分に味わえ」