マクシスが悲鳴を上げるように訴えた。出資した一億ゴルドの行方が心配なのだ。
「あ、それは私は研究しかできなくて、その……交渉とか無理なので、代理人を立てたのです。シアンさんという青い髪の方です」
「そうだ! そのシアンという男と、確かに契約書を交わしたのだ! 二カ月後には出資額が十倍になるというから、私は金を用意したのだ!!」
研究者のジョアンは人前が苦手ということで、研究自体をあきらめようとしていた。そこへ僕の影を接触させたのだ。ジョアンの研究は今後の民の生活を豊かにするものだったので、そのまま王家が後ろ盾になると話を持ちかけた。
ジョアンの名前はいっさい伏せて、代理人のシアンの名前を公にした。
「……シアン」
「お呼びですか、フィルレス様」
僕の呼びかけに応え、青い髪の青年が影の中から姿を現した。いきなり出現したシアンを見て、マクシスは驚いていたが、すぐに一億ゴルドの契約について問いただした。
「お前っ! 私の一億ゴルドはどうしたのだ!?」
「ああ、カールセン伯爵様。その節は借金だらけの有望な研究者へ寄付していただき、誠にありがとうございます」
「なっ、寄付などしていない!! あの金を返せっ!!」
「そうおっしゃいましても、こちらにしっかりとサインをいただきましたが?」
シアンが胸元から取り出した用紙の文言は、確かに一億ゴルドを研究資金として寄付すると書かれており、下部にはマクシスのサインがある。



