「わ、私は治癒魔法の適性がないのです! でも攻撃魔法なら使えます! 魔力量も多いので、上級魔法も使えます!!」
治癒魔法が使えないわたしは、そう言うしかなかった。
「おかしいわね? カールセン伯爵は代々専属治癒士を務めるほどの家系なのに、貴女は使えないの?」
「ということは、カールセン家の血は引いておりませんの?」
「それなのになぜカールセン伯爵夫妻を名乗っているのかしら?」
「「…………」」
わたしたちは、もうなにも言えなくなった。弁明したとしても、正当な後継者として証明できるものがないのだ。
だって、この地位はわたしとマクシス様が、お義姉様から不当に奪い取ったものだから。
なにを言っても、反論され聞き入れてもらえない。周りは敵ばかりで、唯一の味方である夫も頼りにならない。もう、どうしていいのかわからなかった。
その時、門の方からひとりの客がやってきた。
「ラティ、遅くなってごめん。会いたくて急いで来たよ」
「フィル様!?」
お義姉様の婚約者であるフィルレス殿下だ。
これは、この状況を変えるチャンスじゃない? ここで空気を変えないと、もう後がない。フィルレス殿下だって男なんだから、マクシス様の時のように横取りすればいいんだわ!
そう思ったわたしはフィルレス殿下を籠絡すべく、その逞しい胸に飛び込んだ。
「お義兄様!」
こうすれば、ほとんどの男はか弱く見えるわたしを受け止めてくれるはず——だった。



