そこまで決心して、床に寝かせたままだったフィルレス殿下を個室仕様の特別回復室のベッドへ移動させた。
ひとりでは無理だったので、バハムートを呼び出して手伝ってもらう。床に広がる血液から検体を採取した後、汚れてしまった床もバハムートが綺麗にしてくれた。
ベッドの隣に椅子を持ってきて、意識が戻るのを待つことにした。穏やかに寝息を立てるフィルレス殿下は、あの夜会で見た時よりやつれたようだった。
帝国の皇女様から婚約破棄されて、いろいろと大変なのだろう。
「ラティシアさん、戻りました〜! あれ? ラティシアさーん!」
休憩に出ていたユーリが戻ってきて、私を探している声が耳に届いた。声をかけようと特別室のドアへ手を伸ばしたところで、ガチャリと扉が開かれる。
「あ、こちらだったんですね。どなたかの治療中ですか? 私もお手伝いし——」
そこでベッドの上に横たわっている人物を見て、ユーリは石像のように固まった。



