やってきたのはジャニスの父だ。バタバタとこちらに駆けてきて、息を切らしながら一通の手紙を差し出す。

「こちらの手紙がっ、今届きまして……! 刻印が、こ、国王陛下のものでっ……!」
「国王陛下から? いったいなんだというのだ?」

 受け取った手紙をすぐに開封してみると、そこにはある茶会への参加命令だった。その茶会では先日発表したフィルレス王太子の婚約者、ラティシアが妃に相応しいか判定すると書かれている。判定に関する調査のためカールセン伯爵夫妻での参加を求められていた。

 お茶会で調査というのに違和感を感じるが、王太子妃の判定とは特殊なものなのだろうと納得した。

「これは……ラティシアの素性調査のようなものか? カールセンは実家になるから私たちに声がかかったのだな。そうか、これは参加して本格的にラティシアを排除できるかもしれん」

 ここで私たちがうまく証言して、フィルレス殿下の婚約者に相応しくないとなれば、行き場をなくすだろう。そうしたら、私の愛人にしてやってもいいな。そうすれば、あの極上の女が私の手に入る——

 ごくりと唾を飲み込み、私は王都へ向かって馬を走らせた。