幸いにも全員をしっかりと治療することができて、ゴーレムを倒したと知るとワッと喝采が沸き起こる。

「ラティシア様、それにフィルレス殿下、神竜バハムート様。貴方様方のおかげで幻影の森は以前の姿を取り戻すでしょう! 本当にありがとうございます! フェンリル様、これからも何卒この幻影の森をお守りください!」
「いえ、ゴーレムを倒したのはフィルレス殿下ですので……私はまったく役に立っておりません」
「なにをおっしゃいますか! あれほど高度な治癒魔法は初めてでした。それにフィルレス殿下がラティシア様を大切にされているからこそ、こうして助けにきてくれたのではありませんか? それは王太子妃として、なににも得難い要素です」
「そう、ですかねぇ……?」

 オリバーが晴れ晴れとした顔で、お礼を述べてくる。治癒魔法を認めてくれたみたいで嬉しかった。それに忙しいはずのフィル様がこうしてコートデール領まで、しかも幻影の森まで来てくれたことに正直驚いた。

 フィル様は元婚約者とは違う。根本的に違うのだ。
 元婚約者は確かによく褒めてくれたりしたけれど、実際に私のためになにかしてくれたことはなかった。