治癒士として修羅場を潜り抜けてきた私の頭は、だんだんと冷えていく。予想外のことに少し取り乱したけど、まだ大丈夫だ。泣き喚くのはすべてが終わってからでいい。

「バハムート、どうやったらあの魔物に攻撃できる!?」
《この状況では無理だ。あの魔物の攻撃速度が早すぎて、反撃に転じるタイミングがない》

 確かにひっきりなしに閃光が走り、木々を焦がし火の手が上がっている。このままでは森で火災が広がり、さらに大きな被害を出してしまう。

「ねえ、あの魔物の動きを鈍らせれば平気?」
《ああ、それなら反撃できる》
「わかったわ、それならこの薬草を使いましょう」

 私は念のため持ってきていた、痺れを治す薬草を取り出しひとつの束にしていく。この薬は大量に摂取すれば力が入らなくなるのだ。そうすれば、動きが緩慢になってチャンスを作れるかもしれない。早くしないと、倒れている騎士やフェンリルを早く治療しないと手遅れになる。