婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。


 バハムートはほんの十秒ほどで現場に降りて、そのまま小さくなり私の肩に乗る。怪我をして動けない騎士が五人ほど木の根元に並べられていた。
 私は症状の重い怪我人から治癒魔法を使っていく。

癒しの光(ルナヒール)!!」

 続けて治癒魔法をかけて、ほんの十分で五人の騎士を全快させた。

「すごい、もう治ったのか!?」
「あんな一瞬で、あの怪我を……!!」
「貴女は月の女神様だ!!」
「もう大丈夫ですね。他に怪我人はいませんか?」

 こうした戦場で怪我を治すと興奮状態の騎士や戦士には特別な存在に映るらしく、大袈裟な褒め言葉をスルーして私の務めを果たしていく。その後も運ばれてきた騎士たちを三人治療して、また上空へと戻った。

 何度か合図があって、降りては治療していった。
 その間も絶えず魔法と魔法がぶつかる衝撃音が聞こえ、魔物が暴れて木々がなぎ倒され地面を揺らしている。私は後方支援しかできないけれど、それでも自分のできることを精一杯こなしていた。