婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。


 翌朝、オリバー様とともに魔物の被害があった地域へと向かった。道には魔物の爪痕が残り、馬車では進めないので騎馬で移動することになった。

 途中で数日前に魔物に家を壊されて寝る場所もままならない民や、家族を魔物に殺され悲しみに暮れる民を見かけた。魔物に畑を荒らされて収穫目前の野菜がダメになったと、苦笑いする民もいた。


 私は、なにを喜んでいたのだろう。
 私は、判定試験の合否しか考えていなかった。コートデール公爵様やオリバー様が、民のために要塞のような城を建てて、懸命に魔物と戦おうとしているのに、私は自分のことしか考えていなかった。


 コートデール領に入って、不合格確実だと思っていた自分が恥ずかしい。

 私が治癒魔法で怪我人を治すのも、コートデール領の民を助けるのも同じことだ。
 父が教えてくれた治癒士としての誇りは、忘れていない。治癒魔法でも援護するけれど、他にできることは本当にないのだろうか?

 そう考えながら、まずは今できることをしたくて口を開いた。

「オリバー様、もし怪我人がいたら教えてください。私が全員治療します」
「本当ですか? それは助かります! 身体さえ無事なら、いくらでも復興できますから」
「病に冒された民も、数年前の怪我でも、すべて私が治します。治癒士の誇りにかけて」

 オリバー様の新緑の瞳を見据えて、私は宣言した。
 破顔したオリバー様の案内で、怪我人や病人を治癒しながら領地を回った。