コートデール公爵が治める領地には、魔物が多く出現する幻影の森がある。木が鬱蒼と生え、魔物が次々に襲いかかってくる危険な場所だ。コートデール領では森から頻繁に魔物がやってくるので、冒険者や騎士の活躍がめざましい。

 コートデール公爵も元騎士団長として、王都で活躍していた御仁だ。強力な魔物を討伐するときに大怪我を負って、騎士から引退し領地で過ごしているとフィル様に聞いた。

 領地に戻られてからのコートデール公爵はすっかり気難しくなり、親族もあまり立ち寄らないのだとフィル様が教えてくれた。それは年齢のせいなのか、怪我をして引退したことが原因なのか、その両方なのか、とにかく私にとっては不合格をもらいやすい相手に違いない。

 それならなにも怖がることはない。むしろ積極的にダメ出ししてほしいくらいだ。今回は不合格の期待が高いので、より気合が入った。

 やがてコートデール公爵家の領地に入り、要塞のような造りの城が見えてくる。ぐるりと囲む城壁は高く、とても頑丈そうで余程のことがなければ壊されることはなさそうだ。

「バハムート、あれがコートデール公爵様のお屋敷よ! 知らせは届いているはずだから、敷地内に降りてくれる?」
《承知した》