大きなため息を吐いて、ナダリー公爵家へ支援要請の手紙をしたためる。今までも融資を受けられない時は、何度か父に頼んできた。そこでふと、ある疑惑が頭を掠める。

「王都から戻って以来か……まさか」

 ——ラティシアか? 王太子の婚約者になった、あの女の仕業か?

「ジャニス、この手紙は私が直接ナダリー公爵家へ届けにいく。準備をしてくれ」
「そんな! この前も王都に行ったばかりではありませんか!」
「ここで融資を受けないと経営を立て直すのが難しくなるんだ。ジャニス、わかってくれるね?」
「……早く帰ってきてくださいね?」
「ああ、もちろんだとも」

 私は焦る気持ちを抑えて、ナダリー公爵家のある王都まで馬を走らせた。