それはそうだろう。あえてラティには話さなかったのだ。僕はこのタイミングを待っていた。
 もっと僕に心乱して、もっと僕のことを考えて。
 そんな狂気に近い僕の愛は胸に秘めて、なんでもないように言葉を続ける。

「うーん、これは王族に近しい者しか知らないから、仕方ないよ」
「どおりで最近は肌艶もいいし、瞳の色が変わったのもそのせいだったのね……!」
「だ、大丈夫ですかな? なにか余計なことを申したようで……」

 僕たちのやり取りを見ていたアリステル公爵が、いたたまれない様子で声をかけてきた。アリステル公爵は十分いいい仕事をしてくれたので、いつもの笑顔を浮かべて安心させる。

「いや、問題ないよ。遅かれ早かれ伝えるつもりだったしね」
「しかしフィルレス殿下は、どこでこんなに素晴らしいご令嬢を見つけてきたのですか?」

 アリステル公爵の言葉に、初めてラティと出会った治癒室を思い浮かべた。