「諏訪ちゃん。 幽霊さんのことはひとまず置いといて、少し俺の話を聞いてほしいんだ」
真っ直ぐに諏訪ちゃんを見ながら、思いを伝えていく。
「俺さ、「いつも通り」を装うのをやめることにするよ」
「……え?」
「俺たち、ここ最近ずーっとギクシャクしちゃってるじゃん? そんな状態なのに「いつも通り」を装う必要があるのか? って唐突に思ったんだよね。 だから俺はもう「いつも通り」を取り繕うのをやめる。 これから先は自分のしたいように動いていくから、覚悟しておいてください」
と笑ったあとに、諏訪ちゃんの手を握りしめる。
「好きだよ、諏訪ちゃん」
ずっとずっと。
これから先も好き。
その思いを真っ直ぐに伝えた時、やっぱり諏訪ちゃんは戸惑ったような顔をしていたけれど。
それでもいい。 いいんだ。
「よし、じゃあ戻ろう」
「……は、い……」
手を握りしめたまま、ゆっくりと歩き出す。
薄暗いトンネル内を、会話のないまま進んでいく。
諏訪ちゃんとの関係が今後どうなるかはわからない。
わからないけれど、それでも今は……気持ちは晴れやかだった。
伝えられた側の諏訪ちゃんは、戸惑ったり混乱したり、大変かもだけどね。
「自分勝手に言いたいこと言っちゃってごめんな」
という俺の言葉に、諏訪ちゃんは何も言うことはなかった。
ただただ、静かに首を横に振り……俺の手をギュッと握り返している。
諏訪ちゃんが今 何を思っているかはわからないけれど、それを問いただすことはせず……俺もまた無言のまま歩き続けた。
俺たちの距離は、もういつも通りじゃない。
いつも通りじゃない最初の日が、今 始まったんだ。



