11月16日。
特に毎日これといった出来事はない。
沢山のいちごが空から降ってきたり、
ショートケーキの妖精と友達になったり、
不思議なことは起こるはずがない。
起こってほしいなぁなんて、
甘い期待を膨らませながら
今日も私は廊下掃除をしている。
秋の風でほこりがちらかるのでこの時期の
ほうき掃除はとてもめんどうだ。
両手でほうきを握りしめ、四角い窓から曇り空を見上げる。
私の気分まで曇りそうだ。
慣れた手つきで、ちりとりでゴミを回収し
教室を出た。薄暗い廊下は少し寒くもう
冬が近づいていることを実感した。
冷たい蛇口をひねり、手を洗う。
その瞬間、突然肩を叩かれた。
「え、」
「あのさ、ちはる…」
少し申し訳なさそうな顔で、
話しかけてきたこの子は、
隣のクラスの平沢あかねだ。
身長は低く癖の着いた髪を1つにまとめ、
高い位置でポニーテールにしている。
「私のクラスの軽石ほたるがね
ちはるのメールが知りたいんだって」