トオル以上に事情を知らない明智君は楽しそうにそう話す。

「でも、映司は咲子ちゃんの実家にいるんじゃないのか?
 そんな奴を呼び出しちゃ悪いよ」

「どんどん呼び出してくれって頼まれてる。
 息が詰まって死にそうらしいぞ。
 咲子ちゃんの実家は由緒正しいから、映司の性格じゃ一日も持たないらしい」

 明智君が更に楽しそうに笑う。

「やつれた映司さんを見るのが楽しみ」

 トオルと明智君は映司の話で盛り上がって楽しそうだ。
 謙人は吐き気がするくらい気分が落ちていた。
 映司は全てを見透かしている。そして、そういう色恋の話になると究極のお節介になる。
 それに映司の事だから、萌絵とホヨンの微妙な関係にも気付いてしまうだろう。そうなると、映司は俄然としてやる気になる。遅すぎる謙人の純愛を成就させるため、恐ろしいくらいに躍起になるだろう。
 謙人は眩暈までし始めた。
 この調子じゃ、気分がすぐれないという理由で歓迎会を欠席するしかない。
 あ~、欠席したい。このまま救急車で運ばれて緊急入院したい。そこまですれば、映司も諦めてくれるはずだから。