それなのに……。

次の日旅館に出勤すると、
この旅館のトップである父に言われる。

「結婚指輪が嬉しいのは分かるが仕事中は外してもらうよ。
柊生目当てに来るお客様だっているんだから君が結婚してると知ったらがっかりだろ?」

まさか指輪を外せと言われるなんて…
花には絶対外さないと言った手前どう思うか。
残念ながら親父は上司だ。
指輪を外し、胸ポケットに入れる。

家に帰ってからその事を花に伝えると、
「実は、その事お母さんから聞いてたからちょっと買って来たの。」
そう言って花がきれいに包装された細長い箱を出す。

えっ⁉︎と思い中を開けると、
男用のネックレスが入っていた。

「これなら肩身離さず付けていられるでしょ?」
そう言って俺の結婚指輪ネックレスに通して俺の首に付けてくれる。

「ありがとう。でも高かったんじゃ無いか?」
学生の花に買って貰うのは心苦しく思ってしまう。

「婚約指輪のお返しで何かプレゼントしたかったの。」
と、健気な事を言ってくる。

尽くすのは俺の役目なのに…と倍返しを予告して伝えておいた。