夕方には2人で結婚指輪を取りに行く。

帰りの車で柊生は早速、
花の左手薬指に指輪をはめる。

婚約指輪と2つ付けしても良く合い、
上品な感じでまとまっている。
左手をかざして花はうっとり見入ってしまう。

「感動してる所悪いんだけど、
俺につけてくれる?」

そう言って自分の指輪を花に渡す。

花は、ふふっと笑う。
「結婚式の指輪の交換みたい。」
花は柊生の指にそっと指輪を通す。

「落ち着いたら、ちゃんと結婚式やろうな。」
花は、パッと顔を上げ何故かびっくりした顔をする。

「えっ⁉︎結婚式するの?」

「えっ⁉︎しないつもりでいた?
規模は花の好きにしていいけど、結婚式はするだろ絶対。花のウェディングドレス姿みたいし。」
自分の左手薬指を眺めながら柊生は言う。

「嬉しい。結婚式はしないのかと思ってたから。」

「結婚式しないなんて言う男に、
花を幸せにする権利は訳ないだろ。」
兄目線になって柊生はそう言う。

「結婚式かぁ。…夢みたい。」
花は指輪を眺めながら思いを馳せる。

「花は、和装か洋装どっちがいいんだ?
多分時期は、
旅館の閑散期の冬になると思うけど、
うちの旅館で良いなら良い日を取っておくし、教会とかが良いなら、
提携してる場所に予約を入れないといけない。
良く考えておいて、俺はどっちでも良い。」

花は帰りの車の中、結婚式を夢みて幸せに浸る。
柊生は、初めて指輪なんてつけた事に不慣れな違和感を感じながらも、
お揃いの結婚指輪はいつも花と繋がっているみたいで悪くないな。と、思う。

縛られる事を嫌がる男もいるだろうが、
柊生の場合は花になら縛られたいとまで思っている。

幸せそうに笑う花を見ながら柊生は思う。

風呂に入る時や寝る時だって、一生この指輪は外さないと。