「……本当は、大雅と行きたかったなあ」



今年の修学旅行は、沖縄に行くことが決まっている。


海で遊んだり、有名な水族館に行ったり。


たくさんおいしいものを食べて一緒に笑って。


絶対絶対、一緒に行けたら楽しかっただろうなあ。


だけど、それは夢のまた夢でしかない。


それにもう、わたしが大雅の隣を歩くことはないんだから。


また涙がこぼれそうになって、かき消すように首を数回横に振った。


そうしているうちにいつのまにか人の流れも落ち着いてきたし、名残惜しいけれどわたしもそろそろ帰ろうかな。


そう思ってなんとか足を踏み出した、その瞬間。



「────い! めい!」



え……?


ふと耳を掠めたその声が、わたしの足を止めた。


しかし辺りを見回してみても、その声の主はいないように見えた。


……気のせいか。気持ちが重すぎてついに幻聴まで聴こえるようになっちゃった?



「ははっ……バカみたい」



自分自身の情けなさに笑っていると、



「……芽衣!」



と、もう一度同じ声が聞こえて息を止めた。



「芽衣! どこだ! 返事してくれ! 芽衣!」



なに……?もしかして、幻聴じゃ……ない?


帰ろうとしている人たちが



「どうしたんだろうね?」


「人探し? 結構深刻そうだけど」



と噂している。


心臓が急にバクバクと高鳴り始めて、わなわなと手足が震えてくる。


震えを取ろうと思ってぎゅっと拳を握るけれど、むしろ震えは増すばかりだった。