ハーブティーとして使われるカモミールには種類がたくさんあるそうだ。その中でも苦みが少なく一番甘いのがジャーマンカモミールで、今回はそれを使っているのだとハーブティーを飲むリオンにベルは楽しそうに話す。

「ハーブティーにそんな効果があったんですね。全然知りませんでした」

「世の中、教科書のことだけで生きていけないんだよ。知っておいて損することなんてないんだから」

リオンが素直に感心の言葉を口にすると、ベルはえっへんと言いたげな表情で自分の腰に手を当てている。その態度でリオンの心の中でベルの評価は「子どもっぽい人」と一瞬にして下がったのだが、それは口にしない。

ハーブティーと生チョコを食べた後、ベルは「上に行こう」とリオンの手をまた引っ張る。今度は大人しくリオンはついていった。

「あの、癒し屋って何なんですか?」

「フフッ、それは見てのお楽しみ!」

二階へと続く階段を登っていく。二階には長い廊下が広がっており、いくつものドアがあった。そして、その一つ一つに「ラベンダー」や「オレンジ・スイート」と書かれたプレートがかけられている。