運命お断り!


「じゃあ、行くよー。せーのっ」

声かけとともに、圭吾から思い切り抱きしめられる。
それによって恵奈の心臓は、一段と速く動き出した。

「なかなか割れないね」
「そっ、そうですね。私も力、入れますね」
「うん、俺ももう少しがんばる」

ふたりでギュッと強く抱き合う。すると、パン!と軽快な音が響いた。
それに続いて、体に響く衝撃。ぶつかった圭吾の体は、自分とはちがう、筋肉質な男の子のものだった。恵奈は思わずギュッと目をつぶる。

圭吾は体を離すと、落ちたメモを拾い上げた。

「えーっと、『家族構成は?』だって。俺は両親と弟の四人暮らし。あ、あと柴犬のケンタ!」
「私は、両親と、お姉ちゃんがひとり。あ、あと……」

恵奈はそこで言葉を詰まらせる。急に変化した彼女の様子に、圭吾は訝しげに顔を覗き込んだ。

「恵奈ちゃん? 大丈夫?」
「あっ! うん! 大丈夫! えっと、実は私、お姉ちゃんとけっこう年が離れてて。そのお姉ちゃんがこの前結婚して。その旦那さんが、今、一緒に暮らしてるんだ……」

恵奈はギュッと手を握りしめる。
周囲の喧騒とは正反対に、ふたりの間には沈黙が流れた。

「……そっか。じゃ、次いこっか!」

圭吾はそう言って風船を拾い上げる。
そしてまたギュッと恵奈を抱きしめた。

「きゃっ!!」
「風船を一番多く割ったら食堂タダ券だよ? 頑張ろ!」
「そっ、それ、圭吾くんが欲しいだけでしょ!?」
「はは、バレたか〜」

陽気な圭吾の様子に、いつの間にか恵奈の暗い感情も薄れていた。

(不思議。圭吾くんのそばにいると、私の気持ちも明るくなる気がする)

ふたりは懸命にハグし合って、風船を割っていった。