「そろそろ休憩にしよっか」
ベンチを見つけ、ふたりはそこに腰掛けた。恵奈は持ってきたタオルでにじむ汗を拭き取る。
圭吾を見上げると、前に比べたらほとんど汗はかいていない。
ペースを自分に合わせてくれていたのだなと思ったら、なんだかこそばゆかった。
「圭吾くんの言う通り。ジョギングすると気持ちいいね」
「でしょ? 恵奈ちゃんといつか、一緒に走りたいなと思ったんだよね〜」
「毎日走ってるって、すごいよね。いつから続けてるの?」
「昔から走るのは好きだったけど、本格的に走り始めたのは小学校高学年から中学三年までかな」
「本格的に、って……」
「俺、陸上選手目指してたんだ」
圭吾は空を見上げながら、はっきりと告げる。
圭吾の言葉に、恵奈はどう返答すれば良いかわからなくなった。
目指していたということは、今はやめたということだ。
それはなぜなのか、自分は聞いていいのだろうか。まだ知り合って間も無いのに。
圭吾のことを知りたい気持ちと、彼を傷つけたくない気持ちが、恵奈の心中でこんがらがっていた。
「恵奈ちゃん?」
「ごめんね。なんて言っていいか……。どうして七海学園に来たのか、聞いてもいい?」
恵奈は顔を上げ、隣に座る圭吾を見つめる。
彼は優しく微笑み返した。でもその笑顔は、いつもよりも寂しげに見えた。

