運命お断り!


だが、画面の表示を見た瞬間、顔がこわばる。
そこには『お姉ちゃん』と表示されていた。

「ん? 恵奈ちゃん、出ないの?」
「あ……、出る! 今、出るから」

心配して声をかけてきた圭吾に返事をし、恵奈は震える指先で、受話のボタンをタップした。

「もしもし、お姉ちゃん?」
『あ、恵奈? どう? 七海学園は』

明るくて透き通った、カナリヤみたいな声。
恵奈の脳裏には、いつもの優しい笑顔が浮かぶ。

「うん。ちょっと変わった学園だけど、なんとかやってるよ。パートナーもいい人だし」
『それなら良かったぁ。いや、でも、恵奈があの七海学園に行くとはねぇ。拓馬なんて毎日、『あの恵奈ちゃんが、男子と同居なんて!』って嘆いてるわよ』

久しぶりに聞く名前に、心臓が気持ち悪く主張する。

(やだ。無理。聞いてられない。逃げたい)

恵奈は、震える手を反対の手で押さえた。
電話の向こうの姉は、『あっ』とうれしそうに声を上げる。

『今ちょうど拓馬が帰ってきたよ。かわろっか?』
「えっ!? ちょ、ちょっと待って、お姉ちゃん……」

どうにかして断らないと。そう思っていたとき。

「え〜なちゃん! まだ終わらないの〜?」

スマホを当てているほうの耳もとで、そんな声が聞こえてきた。
しかも、けっこう強い声量で。

『あっ! 今の、例のパートナーね! ごめんごめん、邪魔しちゃったね。また電話するから』

姉は慌ただしく、電話を切った。
恵奈はスマホを耳もとから外し、圭吾のほうを見上げた。

「圭吾くん、あの……」
「なんか、あんまり良くない電話なのかなと思ったんだけど、余計なお世話だった?」
「う、ううん。ありがとう。助かった」
「それなら良かった。じゃ、着替えて食堂行こっ。俺、腹ペコペコ〜」

圭吾はニッと歯を見せて笑い、個人スペースへと上がっていく。恵奈は無意識に、彼の背中を追っていた。