話の中断に気を害した風でもなく、加村さんは説明し出した。

「うーん……。俺、カウンセリングを受けるようになってから、心理学にも興味を持つようになってね。図書館で関連の本を何冊か読んでみたんだ。」

「うん、うん?」

「それで……。見つけた。」

加村さんは、急に目の奥を曇らせて呟いた。

「陽性転移。通称『恋愛転移』。」

「はい……それで?」

耳慣れない言葉の意味を知りたくて、あたしは言い渋っている加村さんに、話の続きを促した。

「うん。カウンセリングってね、一種の『非日常的世界』なんだよ。自分が何を言っても、肯定してもらえるし、親身になってもらえる。そんな感情を、『恋愛感情』として間違うことって、よくあるらしいんだ。簡単に言えば、俺が亜犁安さんに抱いてた感情は、カウンセリング内の只の幻ってことだよ。」

サラッと言ってのけた加村さんに、あたしは、内心ビックリした。