「へ?」

注意をされそうな予感を感じて、あたしは汗を垂らした。

(やばい、イラつきが顔に出てたかな?)

「えっとですね、笑顔が上手く作れてなかったところですか?」

「それもあります。しかし、今回は、お客様への応対に問題がありました。お客様をお待たせする場合は、手をこの様に構え……。」

加村さんは、右手を下にして、自分の胸の前に置き、左手を重ねて両手を組んだ。

そして、説明を続ける。

「……頭を下げて『少々お待ち下さい。』と言った後にその場を離れて下さい。加えて、言葉を途中で切るのも良くありません。お客様への言葉は、最後までハッキリと言って下さい。それから……。」

早口でしゃべる加村さんの説明に頭が混乱しつつも、あたしは別の2つのことでムカついていた。

(何で、あんな態度の悪い客のせいで怒られなきゃいけないの~。)

これが、1つ目。

「……ということです。分かりましたか?ミヅキさん。」

やっと話が終わったと思ったら、怒りの矛先を加村さんに向けたくなった。

「っ分っかりました!!」

大声で、ムカつきを含ませた声色で返事をする。

あたしの怒りを知ってか知らずか、加村さんはこう言った。

「それなら、良いです。では、仕事に戻ってくださ……。」

ブチ。と、堪忍袋の緒が切れる。



「あのっ!!」

「あたしの名字、ミ『ツ』キですっ!ついでに、名前もリホナじゃなくて、リ『オ』ナですっ!!」

さっき出せなかった表情を、思いっ切り加村さんに向ける。

目をつり上げて、口を大きく開けて歪ませて。

すると。