「え?」

ニイバシ先生は、あたしからのお祝いの言葉に、すごくビックリした顔をした。

「何のこと?」と、言いたげだった。

「だって、加村さん、先生に告白したんでしょ!加村さん、元気そうだし、二人は……!」

嫌悪感なんて感じていなかったはずなのに、あたしは目の前に座っている女性の反応に、イラつきを覚えてしまった。

そして、声を荒げる。

「とぼけないでください!」

ポロっと、涙が一粒落ちる。

「観月さん……。」

ああ、名前を呼ばれるだけで、腹立たしい。

あたしは、いつからこんなに泣き虫で、嫌な子になってしまったんだろう。


「観月ちゃん。」

加村さんが、低い声で静かに言った。

ジッと、黒縁眼鏡の奥にある、澄んだ瞳であたしを見つめていた。

「ちょっと、2人で話せないかな?先生、すみませんが、席を外していただけますか?」

彼は、言葉の後半、ニイバシ先生の方を向いて、申し訳なさそうに言った。

「ええ。分かったわ。」

そう答えると、ニイバシ先生は、部屋を後にした。

「…………。」

加村さんは、しばらく黙った後、こう言った。

「分かってたことだったんだ。告白の、返事なんて。」

「?」

あたしは、首を傾げて、加村さんの方に向き直った。