暗闇の中で、顔全体に感じる布の感触と、暖かい温度。

「!?」

あたしは、声を出して、混乱していることを言葉にしようと思ったのだが、何せ口も軽く塞がれている状態なので、話ができない。

「加村さん!?何してるんですか……。離して……。」

あたしは、モガモガと言った。

そう。

加村さんが、自分の胸であたしの頭を抱きかかえて、じっとしているのだ。

「こうしてれば、見えないでしょ?」

加村さんは、囁くように言った。

「え……。」

加村さんが自分の胸に、あたしの頭をぎゅうっと押し付けながら言った。

「なんか、観月ちゃん、あのまま放っておくと、逃げ出しちゃう気がして。」

「…………。」

「こうしてれば、涙も、泣いている顔も見えない。」

ドキン、ドキン……

あたしは、鼓動が速くなるのを感じた。

……加村さん?

「でも、これじゃあ、加村さんの服が汚れてしまいます……。」

フグフグと、あたしは小さな声で言った。

「良いよ。」

「……!」

悲しいはずなのに、あたしは嬉しくなって、またポロポロと泣いた。

加村さんは、時折、泣き続けるあたしの頭を、ぽん…ぽん…と、優しく叩いてくれた。

まるで、小さな子どもをあやすように……。