俺は、1年経ってもまだ自分の中の傷を治し切れなかったのだ。

今思うと、亜犁安さんの言葉は、俺のただの聞き違いか思い違いだったのかもしれない。

でも、確かに、当時の俺は、彼女の言葉で「傷ついた」。

強い反発心と、嫌悪感を心理士の先生にぶつけるクライアント。

歳上の女性に向かって、罵声を浴びせる男。

それが、紛れもなく1年半程前の俺だった。

……最低な男、加村悠輝。

亜犁安さんは、そんな俺を決して責めずに、ただただ「うん、うん。」と、話を聞いてくれていた。

そんな俺の心の状態が、何日も何週間も続いた。

傍から見れば亜犁安さんの方が辛い。

でも、俺だって、葛藤ばかりの日々を送っていた。

そんな日々が幾日か過ぎた。

それでも俺は、毎週カウンセリングを受け続けた。

あの火曜日も、亜犁安さんに案内されるまま、いつものカウンセリングルームへと入っていった。