眠りから起きたのはドアをノックされる音を聞いたからだった。


うっすらと浮上する意識の中でコンコンとまた聞こえてきた。


薄めを開けると一瞬ここがどこなのかわからなかったけれど、小さな窓から差し込む月明かりでようやくここがミチ村の公会堂であることを思い出した。


体を起こした智香は随分と疲れがとれていることに気がついた。


しっかりと布団で休憩できたことがよかったんだろう。


公会堂の中にはエアコンの低い機械音だけが聞こえてきている。


「お姉ちゃん、お兄ちゃん、いるー？　もうすぐお祭りはじまるよ？」


ドアの向こうから聞こえてきた子供の声に隣の裕貴も目を覚ました。


手鏡を見ながら手ぐしで簡単に髪の毛を整えて、ドアを開ける。


そこにはスーパーマンのお面をかぶった子供が立っていて智香は一瞬言葉を失った。


「もうお面なんてかぶってるの？　安喜くん」


しゃがみこんでそう聞くと安喜くんが笑いながらお面を外した。


「なぁんだ、僕だってバレてたんだ」


「バレバレだよ。そのお面いいね」


「いいでしょ！　お姉ちゃんとお兄ちゃんの分も持ってきたんだよ！」