オフクロサマ

☆☆☆

大田家を辞するとき奥から安喜くんが顔をのぞかせた。


その表情には昨日の明るさはなく、なにがあったのかわかっている様子だった。


「今日は遊んであげられないの。ごめんね」


玄関先までやってきた安喜くんの頭を撫でると、安喜くんは泣き出してしまいそうな表情になった。


「本当にごめんね?」


加えて言うと安喜くんはぶんぶんと左右に首をふる。


「違うんだ。僕、心配なんだよ」


「心配?」


「うん。前にきたお兄ちゃんとお姉ちゃんたち、大丈夫なんだよね?」


その言葉に智香と裕貴は目を見交わせた。


「それってどういう意味だ?」


裕貴に聞かれて安喜くんはチラリと家の奥に視線を向けた。


大田が聞いていないか心配しているのかもしれない。


「お祭りのときに音を立てちゃいけないのは絶対なんだ。なぜなら、今日起こったようなことになるから。たとえカメラのシャッター音をオフにしていてもダメなんだ。だって、シャッターを押す音が聞こえるから」


シャッターを押す音?


そんな音、あの会場内では聞こえないはずだ。