オフクロサマ

さっきまで熱を発していた体内のものが、すべて偽物にかわってしまったかのような冷たい感覚。


眼球だけを動かして必死で自分の体を確認してみると、指先が見えた。


その指には爪がなかった。


悲鳴をあげようとしたが、声が出ない。


そこで舌先がふわふわとした感触になっていることに気がついた。


更に視線をさまよわせると、自分の体にいくつもの縫い目があることに気がついた。


さっきまで血が通っていたはずの智香の体はお祭りに使われる人形に変化していたのだ。


男が周囲の人々を黙らせる。


そして「オフクロサマ！」と、重低音のある声で叫んだ。


至近距離でそれを聞いた智香は鼓膜が破れそうだった。


しかしその鼓膜すらも今は作り物になってしまっている。


男が「オフクロサマ！」と叫びながら智香の腹部を乱暴に鷲掴みにした。


鋭い痛みを感じるかと思ったが、それは智香の幻覚に終わった。


今まで感覚があったから、痛いと思い込んでいただけだった。


実際には男が体に触れる感覚すらなかった。


男は容赦なく智香の腹部を剥ぎ取り、内臓をあらわにした。


「オフクロサマ！」