りんご色ジェラシー

「羽生」


だけど岩清水くんは続けるつもりのようで、あごに手を添えられたかと思ったらそのまま上を向かされる。


「っ……」


触れるだけのキス。
だけど心臓はばくばくで、顔だけじゃなくて体まで熱くなってきた。


「真っ赤」
「わ、わかってるから言わないでよ~っ……!」


指摘されると余計に恥ずかしい。
見られていたらいつまでたっても熱が逃げないままだ。

だけど岩清水くんの手のせいで顔をそむけることができない。


「女ならまだいい」
「えっ……?」


なんのことだろうと思って耳を傾ける。


「でもべつの男にかわいいとか言われて顔赤くなんのやめて」

「えっ、それって……」


ふと、昨日教室でドレスの話をしていたときのことを思い出す。
あのとき少し怒っているように見えたのは……


「や、やきもち……?」


びっくりして考えていたことがそのまま口から出てきてしまった。
しまった、と思って慌てて口をふさぐ。

だけど岩清水くんの顔が少し赤くなったから、焦りはまた驚きに変わった。


「ご、ごめんね。まさか岩清水くんがそんなふうに思ってくれてるなんておもわなくて……」

「は? 普通、自分の彼女がべつの男に褒められて赤くなってんのなんて嫌だろ」

「言われてみたらそう、なんだけど……!」


それがまさか自分に当てはまっているなんて思いもしなかったから。
岩清水くんはそういうの気にしない人なんだって勝手に思ってた。

……どうしよう、嬉しい。


さっきまで見ていた怖い夢が、不安だった気持ちが晴れていく。