「行くぞ」
「えっ……!?」


それどころか女の子に返事もせず、私の手首を握って廊下へと歩いていく。

あまり人がいないところまで来ると、そっと手が離れる。

……もしかして、助けてくれた?


「岩清水くん、ありがとう」


確証はないけれど、助かったのは事実だしお礼を告げる。
すると「おう」とそれだけ返事が返ってきた。


「岩清水くんはすぐ戻る? 私はちょっとたってから……」


本当は私もすぐに戻って初ちゃんたちのお手伝いがしたいけれど、まだ顔が熱くてぱたぱたと手で仰ぐ。
すると岩清水くんが私の顔をじーっと見ていることに気が付いた。


「え、えっと、どうかした?」
「べつに」
「そっか……」


岩清水くんがそう言うのなら……
と思うけれど、やっぱり視線を感じてドキドキする。

これじゃ熱いのがいつまでたってもおさまりそうにない。
どうしようかと考えていると、岩清水くんの視線がふいっとはずれた。


「……?」


なんだか少し怒っているように見えて、自然と目線が表情を追う。


「あ、岩清水~」


だけどかわいい女の子がやって来て、すぐにそれどころじゃなくなった。


「なに」

「飾り付け高いとこ届かなくてさ~、手伝ってほしいんだよね」

「あー……わかった」


そう言うと目の前にいたふたりは歩いて行ってしまう。

ドキドキと、さっきまでとは違う痛みが走る。
不安になったって仕方ない。
いや、付き合ううえでなにかしらの不安は必ずついてくるものだ。

だから大丈夫。
そう無理やり心を落ち着かせて、私も教室に戻った。