夜中。
 体に違和感を感じて目を覚ますと、なんと箱に入れたままにしたはずの人形が私の体にまとわりついていた。

「な、何!?嫌あ!!」

 必死で振りほどこうともがくけれど、人形は私に絡みついたまま。
 その時、

「あ、女の子には優しくしてあげないとダメだったね〜」

 それは私の声じゃない。
 同い年くらいの若い男の人の声。私は今一人…のはず。

 じゃあ、この声は一体…

「誰!?泥棒!?強盗!?」

 私は動けないながらも急いで周りを見渡した。

「違うよ、僕、温めてあげようと思って」

 返ってきたさっきと同じ声の主は、すぐそば。つまり、私にまとわりついてる人形から聞こえた。

「いや…!!あなた人間だったの!?」

 流石に恐怖で涙目になり、さっきより強く振りほどこうとした。

「違うよ、僕は人形。君と仲良くなりたいんだ」

 その声は穏やかでのんびりだ。

「じゃあなんでいきなり抱きついてるの!?」

 優しい声に飲まれないよう少し強い口調で尋ねると、相手はまた穏やかに返す。

「さっきも言ったけど、温めてあげたかったんだよ。僕が意識を持ったら君が寝ていたから、寒いんじゃないかと思って。あとね、君が起きたら早く抱きしめてあげたくて」

 私を抱きしめたまま、全く悪意のない様子でそう言った。