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日本、スペイン戦の前日………


「このライン、太過ぎないっスか?」



「えっ、何が?」



「いや、だからですね………このサッカーコートのライン、正規のラインの太さに比べて太過ぎないかって事ですよ」



「そうだよ、その方がインスタ映えするだろ?」



「インスタ映えって!」



「どうだ、カッコいいだろ♪」



「いい訳あるかっ!」



そう、いい訳は無かった。サッカーコートは、その大きさは勿論の事その各ラインの太さに至るまで細かくルールによって決められていた。ましてや、それがワールドカップで使用されるコートなら尚更である。


しかし、このコートを担当していたスペイン人のカルロスはラテン系の性格ならではの『テキトー&いい加減』おまけに内容より見かけ重視な男だった。


「しかし、カルロス。このゴール横のラインなんて得点にもろ影響するし、正確に引いた方がいいんじゃないですか?」



「大丈夫、大丈夫、だって相手側も同じにしてあるし条件は一緒だから♪ま〜そんなに細かい事気にするなよ、セニョール♪」




「だってこれ、どこからがアウトなんですか?」



「ま〜この辺かな…………」



「マジですか?全然違いますけど………」



驚くべき事に、カルロスはサッカーにおける『ラインアウト』の定義をまったく知らなかった。これでよくワールドカップのコートを担当出来たものだ。


「ま〜オレ、審判じゃね〜しノープロブレムだね♪」


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