その11
夏美


「ハハハ…、実はよ、二人は理解してくれると思ってさ。その弁護士さんから今日の午後、相馬さんにメッセージを届けてもらったんだ。なにしろ事態は、分刻みの切迫したとこに来てるしな」

私はつくづく感じた

紅子さんの凄いところは、ずば抜けた腕っ節や度胸だけでなく、このインテリジェンスを兼ね備えているということだと…

そのすべてが、私ら凡人を卓越しての”怪物”なんだと

「おそらく、明日にでも、弁護士を通じて何らかの反応が得られるはずだ。場合によっては、”あの人”と直接会って、直談判という流れになるやもしれないな…」

「そんな…!直接会ったりして、大丈夫なんですか?危険ですよ」

私は思わず前のめりになって、大きな声を出していた

「あのよう、ここまで来て、大丈夫もクソもない。そうなったら、条件なら何でも受ける覚悟で臨まないと…。それに、あの人とは初対面じゃないしな」

ここまでくると、目の前にいる紅子さんが聖人に見えてくる


...


「こっちは”その話”がつくことを想定して、明日、砂垣に要求を呑ませてくるつもりだ。まあ、賭けだな、こりゃ…(苦笑)」

「そうなった場合、明後日、あなた達二人の引責辞任が南玉幹部会で議決される時点では、状況は一変してるわ。その際の、細かい申し合わせを、今、行っておきましょう」

ここで、今日の”結論”がミキさんの口から出た

その後、黒いワンボックスカーの中で、私たち4人は綿密な打合せにかかった…