その2
夏美



鷹美の家に電話したけど、留守だった…

家の人の話では、夜出かけて誰かと会っているようだ

一応、帰ってきたら電話してもらうことになってるけど…

ふう、参ったわ…


...


その夜はまず、達美から電話がかかってきた

「夏美、まずいことになってるぞ。亜咲を襲ったって奴、今日、自首したらしい。一応、墨東赤隊に連なる女らしいけどな。レッドドッグスのメンバーからフクロにされた、仲間の報復だってことだ」

「!!!」

「もうこのあたりじゃ、すごい勢いでその話が広まってるみたいだ。おそらく、鷹美の耳に届くのも時間の問題だろう」

何ということだ…!

「すまない、達美…。完全に私の判断ミスだわ。鷹美、連絡取れないんだ。ミキさんからも言われて、さっき自宅へ電話したんだけどいないんだよ。今頃、他の連中に取り込まれてるかも…」

「ああ、それは覚悟しとかなくちゃな。明日の幹部会はウチらが的にされるだろうさ」

「私の責任だ。アンタまで、引退前に泥をかぶせることしちゃって…」

「夏美、私らは、信じるところに従ったまでだしよ。いざとなれば、ハラ切りで散ればそれでいい」

達美はこういう時、ジタバタしない

やっぱり、私とは違うよ


...


とにかく、達美とは、明日の幹部会前に会うことにした

その時点の状況を見て、方針を定めたようと…

達美との電話でのやり取りを終え、電話の前でボーっとしてたら、ミキさんから電話が入った

紅組も襲撃犯出頭の件は、すでに承知していた

「ミキさん、すいません。鷹美、遅かったみたいです。ダメでした…」

私はまず、ミキさんに指摘された鷹美の件を詫びた

「ちょっと相川さん…、しっかりしなさい!いい?例の襲撃犯って”女”、”本物”かどうかは別として、この短時間での流布は作為を感じるわ。ひょっとっすると、ターゲットはあなたかもね。そうだとすれば、はっきり言って、刃根さんは巻き添えよ」

「…」

私はミキさんの言葉に愕然とした

「いずれにしても、この状況では明日、あなたと刃根さんは糾弾されるわ。いい?そこでは、即答は避けるの。どんなに苦しくってもね。恥も外聞も捨てて、数日間結論を持ち越すように踏ん張って。刃根さんともそれ、共有するのよ」

「はい。でも、その後は…」

「紅子さんとも話して、明日の夕方、ケイちゃんのお見舞いに行くことにしたわ。その前に、刃根さんを連れてK駅に来て。4人で会いましょう。幹部会の結果を聞いた上で、対処を相談しましょう」

「わかりました。そういうことで、達美には伝えておきます…」

「相川さん、これは単に、従来の排赤だとかの対立の図式とは違う気がするわ。惑わされちゃだめよ。明日は”何が”あっても、とにかくその場を凌ぐの。いいわね?」

いずれにしても、明日は修羅場になる…

私はそう覚悟して、ミキさんとの電話を切った