その19
夏美



「先輩…、中へどうぞ」

あっこが迎えに来たわ

「終わったの?」

「ええ…。でも、お二人には厳しい結論でした。すいません、私の反論だけじゃ何ともで…」

「いいのよ。あっこ、今日は本当に感謝してる。ありがとう」

「ウチらは覚悟できてたしな。二人の後は頼むよ、あっこ」

「先輩…」


...


会議の場に戻った私たち二人に、土佐原先輩がみんなの結論を告げた

「…。二人には引責辞任を要求するということで決した」

「この結論は真摯に受け止めます。ただ、考えるところあって、私ら二人の返答は明後日にさせてもらいたいんですが。いかがですか?」

達美がその場で立ち、こう答えた

「ここにいるみんな、二人の功績には敬意を表している。異論を唱えるもんはいないさ。真澄、どうだ?」

「…、ええ、それで承知です」

これで、私たちへの対処が決着した

ふう…、なんとか、2日間の猶予は確保できた訳だ

だが…


...



何ということだ…

墨東会との事後折衝を、あの本郷麻衣に一任するという

冗談だろうが…

土佐原先輩も荒子も、それ、納得したと…

まだこの春に入学したばかりの新入生じゃないか、こいつは…

どうやって荒子やOB、OGの重鎮を説き伏せたんだ?

あの1年、底知れない恐ろしさだ…


...



ここまでくると、もう、緊急事態に近い

明後日、私らが辞任したとすれば、麻衣一任がその場で決まる

このままだと、”あの女”に乗っ取られる

南玉、いや、都県境一帯を…

時間がない…

いや、この間に方策を打てば、最悪の事態はまだ防げるんだ

その為にも、夕方の紅組両巨頭とは、念入りに今後を模索しなきゃ


...



私はその魔少女の目から、視線を外さなかった…

正直、今日はボロクソにやられたわ

身も心もズタズタよ

だけど、これで終わりだと思ったら大間違いよ

”正体”を見せたからには、こっちも手を打つ算段はある

バックとやらを盾にした、この卑怯者め!

こんな危険人物、このまま野放しにして、引退などできるか‼