その18
麻衣



ふん、ここはつけ込める機があるぞ…

「はい。この際なんで、はっきりさせていただきます。私は相和会会長、相馬豹一の遠い親戚にあたります。おじさんは、ああいう人なんで、私がこの都県境で暴れることには興味を持ってて、色々と…。それは確かにあります」

「それで、その伝手で”先方”と話をつけられると…。そう言うことかい?」

木戸一派3年のケバイ先輩が、私を見定めするように、カマかけてきたわ

「皆さんもご存知かと思いますが、相馬はその辺のやくざの親分とは違うので…。”感覚”がですが。私には、常に”自力”を求めてきてます。子供でも容赦しません、あのおじさんは。で、これからやろうとしてることは、私がねじ伏せるんです。墨東のトップを」

「はー?じゃあ、砂垣に詫び入れさせられるってのか?お前!」

いづみ先輩、目を吊り上げてるよ、はは…

「なぜか、噂に尾ひれ背びれが付いて、私の目、相馬豹一とそっくりだっていうことで…。ただ、それだけで、媚びてくる連中がいるんです。その上、このたびはドッグスが、次期総長の合田さんの特攻隊に組み込まれました。”狂人”の血を汲んだ私が、”狂犬”直属ってことが、相乗効果みたいなもんで、すでに”先方”から歩み寄りのシグナルが複数、舞い込んできてるんです」

「ハハハ…、荒子、やらせてみたらどうよ?うまくいけば、無血で墨東をひれ伏せられるし」

「…」

荒子さん、腕組みして私の顔を食い入るように見てる

「いいか、最優先は戦争回避だ。大変な思いを経て、犠牲も払って荒子体制に継いだんだ。ただでさえ、イケイケの総長誕生ってことで、警戒の目に晒されてる。荒子、その自覚はしっかり持ってくれよ」

ここで、土佐原OBから、また絶妙の一言が入った

で、荒子さんが口を開いたよ

「わかりました、先輩。おい、本郷!思いっきり私を使っていいから、今回の件、収めてみろ」

「はい。では、狂犬の威を借りさせていただきます」

あらら…、みんな苦笑いしてるわ

「砂垣さんには直接、南玉の”代表”に直での謝罪を要求してきます。ただ、やはり向こうは年長者ですから、いくら敵でも立場を考慮して、ウチの”代表”は土佐原先輩ってことで折衝していきたいんですが、いいですか?合田先輩」

「ああ、砂野郎の頭を土佐原御大に下げさせりゃ、それで私は大満足だよ。ハハハ…」

「よし、これで行こう。みんなもいいな」

どうやら、異を唱えるもんはいないみたいだ

「じゃあ、外の二人を呼んで、会議を再開だ」

へへ…、うまく行ったみたいだ