「そうだよ」

沙月の膝から飛び降りた嵐猫は、ルーチェに近づいた。嵐猫の存在に気が付いたルーチェは「猫が喋っ……!?」と驚く。

しかし、ルーチェはすぐにいつもの表情に戻った。

「そう言えば、自己紹介がまだでしたね。僕は、ルーチェ・クロウディア。闇魔法を得意とする魔法使いです」

魔王の側近ということは明かさずに、ルーチェは自己紹介をする。

ルーチェの自己紹介に、皆は「魔法使い!?」と声を出した。そして、ルーチェは簡単にここに来た経緯を話す。

「その杖は、僕のいる世界では『呪具』と言われているんです。僕は呪いの耐性があるから、何も無いけど……他の人が触ったら、何が起こるか分からない」

葉月は、ひとめが触ろうとしていた黒い杖に目を向けた。杖を、ルーチェは拾う。

「その杖、どこで見つけたんだ?」

火影が問いかけると、ルーチェは「……僕を拾ってくれた人の家に封印されていたんです」と返した。

「……ところで、ルーチェ。これからどうするの?」

「どうしましょう……元の世界の帰り方が分からないし、他の人は僕のことを見えてる感じじゃなかったし……」

ルーチェは、この神社に来る前のことを思い出す。ルーチェが通行人に話しかけても、誰も反応しなかったのだ。