そして、お雪は息を吹きかけて一つ目小僧のひとめを凍らせた。

「お、お姉様……」

落とし穴から上がり、やりすぎでは、と言いたげな顔でつららはひとめを見る。

「賑やかだね」

沙月の膝で寝ていた猫又の嵐猫は、目を開けるとそう言ってお雪たちを見つめた。

「……そうだな」

葉月が嵐猫の言葉に相槌を打った瞬間、近くにカラン、と何かが落ちる。

「おい!空から、何か降ってきたぞ!!」

妖怪の火影が、何かが落ちた場所へと急いで向かった。黒い紫の宝石の付いた、長い杖。

ひとめが落ちていた杖を拾おうと手を伸ばすと、どこから「それに触るな!」と声がして、ひとめは手を止める。

皆が一斉に声がした方を見ると、サラサラとした黒髪に紫目のルーチェがいた。

ルーチェは穴に飲み込まれた後、この神社の近くで着地してすぐに異世界に飛ばされたことを理解した。そして、杖に込められた魔力を追ってこの神社にやって来たのだ。

「……この気配……お前、妖怪か!?」

葉月は勢い良く立ち上がると、ルーチェに近づく。ルーチェは「妖怪?」と首を傾げた。

(……そういや、前世でそういうのあったな……転生してから、全然聞かなくなったから忘れてた)

「妖怪って、雪女とか座敷わらしとかのあれ?」

前世の記憶で「妖怪」という言葉があったことを思い出したルーチェは、葉月に問いかける。