ぐ、と息を呑んでいるとシャッター音が聞こえて前を見る。
「東京に来た記念」
「東京に来た感出てます?」
「にしても彼女の動向を知らねーの不憫」
「誰が?」
「ツバキが」
え、と声が漏れそうになったのを止めた。
なんでその想像が出来なかったんだろう。
今を風靡するバンドのベースボーカルを担っていて、片田舎でも見られていたあの人に彼女の一人や二人。
急に沈んだ思考に少しも構うことはなく、篠山さんは料理をぽんぽんと注文して行った。
先程まで安堵でふわふわしていたのに、やっぱり帰りたくなってきた。
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