いえ、と首を振る。私のスマホはヤマダさんの向こうに置かれて、もう音は消えていた。
「まずマネージャーに連絡しろ」
「飯食ったら」
「今だ。どれだけ、色んな人間がお前のこと心配して迷惑かけて走り回ったと思ってるんだよ」
篠山さんがポケットからスマホを出す。
声は震えていた。すっとヤマダさんの瞳から色が抜ける。
冷たい冬みたいに。
「辞めるって言ったろ」
どきりと心臓が嫌な音を立てた。
「ふざけた冗談言ってんなよ」
「これ寧子ちゃんの前でする話?」
名前を出されて、私の目が泳ぐ。
「私、帰り……」
「お前が巻き込んだんだろ」



