このご時世、その心配はついて回る。

「確かにヤマダさんが善人だったから良かったものの」
「ヤマダさんって言うの?」
「多分、本名はちが……いらっしゃいませ」

入り口に現れたお客さんの影に顔を向けた。食券を手に持つ男性。私を真っ直ぐ見て目を瞬かせた。

歳は近く見えるけれど、大学の知り合いではない。

「お好きな席にどうぞ。食券貰います」
「あ、どうも」

食券を貰おうと出した手首を逆に掴まれて止まる。強盗か、と男性を見返した。

「あーやっぱり」

反対の手に持っていたのはスマホ。その液晶と私を見比べて言った。