その機嫌を取るようにコートのポケットから鍵を出す。 「車持ってきました」 「え、まじで?」 「中古車なので、乗り心地は保障できませんけど」 田舎はこれが無いと移動手段が殆ど無い。 実際、大学までも車で通学している。 「アシにするつもりじゃなかったんだけど」 ぽつりとヤマダさんが言うので、私は返す。 「私がバス待つのが嫌だったんです」 「あーそうやって気を遣ってヒール役を買うし」 「うるさいな。乗らないなら現地集合しましょう」 「ごめんなさい、乗せてください」 話は丸く収まった。